はじめに ── 「今日、休みだったはずなのに」
「今日は休みのはずだった」
そう思いながらも、サービス担当者会議の調整メールを送り、会議が終わったら今度は後見人として本人の口座確認に走る。そんな一日を過ごした経験が、あなたにもあるのではないでしょうか。
ケアマネジャーと社会福祉士(成年後見人)の兼務は、利用者を制度横断的に支えられる強みがあります。でも同時に、どちらかが「休日の業務」になりやすいという構造的なつらさがあります。
この記事では、そのしんどさを少し和らげるかもしれないツール──AIツール──について、介護・福祉の現場に引き寄せてお伝えします。プログラミングの知識は、まったく必要ありません。
「サービス担当者会議」と「後見活動」、何が大変なのか
まず、あなたの仕事の構造を整理してみましょう。
| 業務 | 大変なところ | 記録・書類の多さ |
|---|---|---|
| サービス担当者会議 | 日程調整、出席者への連絡、議事録の作成 | 会議録、ケアプランの修正、各事業所への情報共有 |
| 成年後見活動 | 本人の意思確認、家庭裁判所への報告、財産管理の記録 | 後見事務報告書、財産目録、支援経過記録 |
どちらも「人と向き合う時間」が本来の仕事のはずが、気づけば「書類と向き合う時間」が大半を占めている。そこに兼務の重さがあります。
そもそもAIツールって何?
「AIツールは聞いたことがある。でも実際に何ができるの?」という方のために、まず整理します。
ChatGPT・Gemini・Claude AIなどのAIツールは、日本語で話しかけるだけで、情報の整理や文書の下書きを手伝ってくれる、頼れる後輩職員のようなものです。
使い方はシンプルで、2つのステップがあります。
ステップ1:まず「聞いてみる」 ── 「この状況でどう書けばいいか」「何を盛り込めばいいか」を相談する。アドバイスをくれる相談員のような使い方です。
ステップ2:「下書きまで作って」と頼む ── 状況を伝えたうえで、「文書の形にしておいて」と頼む。手を動かして記録を書いてくれる後輩職員のような使い方です。
どちらも、難しいコマンドや専門用語は一切不要です。日本語の口語で指示するだけで動きます。
サービス担当者会議の準備に使うとしたら
会議前にやっていることを思い浮かべてください。アセスメントの情報を整理して、前回のケアプランと照らし合わせて、各事業所に連絡文を送って……と、会議そのものの前にすでに相当な時間を使っています。
まず「聞いてみる」使い方:
「サービス担当者会議で、本人の褥瘡悪化と 家族の介護負担について話し合う予定です。 議題案を3つほど提案してください」
慣れてきたら「下書きまで作って」と頼む:
「以下の情報をもとに、サービス担当者会議の 議事録の骨格と、各事業所への出席依頼文の 下書きを作ってください。 利用者:○○さん(要介護3)、主な課題:褥瘡の悪化と家族の介護負担」
「書く」作業はAIが担い、内容の判断と確認はあなたが行う。 この役割分担が、会議前後の時間を少し取り戻します。
後見活動の記録整理に使うとしたら
成年後見人としての業務でとくに時間がかかるのが、家庭裁判所への定期報告です。支援経過の記録を整理し、財産の収支を確認し、本人の生活状況をまとめる。これを年に1回、または随時求められます。
まず「聞いてみる」使い方:
「家庭裁判所への後見事務報告書に書く 生活状況の欄には、どんな内容を 盛り込むべきですか」
慣れてきたら「下書きまで作って」と頼む:
「この1年間の支援経過メモをもとに、 家庭裁判所への後見事務報告書の 生活状況の欄の下書きを作ってください」
社会福祉士としての専門的な判断は、あなた自身のものです。AIは「文章を起こす後輩」であり、「支援方針を決める専門職」ではありません。
ケアマネ×後見人の兼務に引き寄せて整理すると
| やること | AIツールが手伝えること | あなたが担うこと |
|---|---|---|
| 担当者会議の準備 | 議題案・連絡文の下書き作成 | 内容の確認・判断・送付 |
| 会議後の記録 | 第3表・議事録の下書き作成 | 事実確認・加筆・署名 |
| 後見事務報告 | 支援経過・生活状況の文章化 | 事実の正確性確認・提出 |
| 関係機関への連絡 | 連絡文・報告文の下書き作成 | 内容判断・送付 |
| 財産管理記録 | 収支一覧の表作成 | 数字の確認・承認 |
「ICTが苦手」でも使える理由
AIツールを使うのに、プログラミングの知識は必要ありません。業務マニュアルを読んで仕事を覚える後輩職員に対して「この利用者のケアで気をつけることを教えておいて」と口頭で伝えるように、日本語で話しかけるだけです。
また、AIが作った文書はあくまでも「下書き」です。モニタリングで支援内容を確かめるように、AIの出力も必ず確認してから使う。この習慣さえあれば、失敗のリスクはほとんどありません。
ChatGPT・Gemini・Claude AIはいずれも、アカウントを作れば無料から使い始めることができます。まずはどれか一つ、「聞いてみる」ところから始めてみてください。
まとめ ── 休日を守るための「後輩職員」を持つ
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| 使えるAIツール | ChatGPT・Gemini・Claude AIなど。日本語で話しかけるだけ |
| 使い方のステップ | まず「聞いてみる」→慣れたら「下書きまで作って」と頼む |
| ケアマネ業務での活用 | 担当者会議の準備・議事録・ケアプラン関連文書の下書き |
| 後見業務での活用 | 後見事務報告書・支援経過記録・関係機関への連絡文の下書き |
| 役割分担の原則 | 「書く」はAI、「判断する」はあなた |
| ICTが苦手でも大丈夫な理由 | 日本語で話しかけるだけ、最終確認はあなたが行う |
兼務のしんどさは、制度や組織の構造に根ざしているもので、ツール一つで解決するものではありません。でも、「書く」作業の一部を後輩に任せられたら、その分だけ本来の仕事──利用者や本人と向き合う時間──に使えるかもしれない。
今日、休日返上で会議をこなしたあなたに、その選択肢があることを知っていただけたなら、この記事を書いた意味があります。

